
異文化が出会い、互いに理解し合ってつながる素晴らしい瞬間を実現するお手伝いができることが通訳・翻訳業に携わる醍醐味です。代表である私自身、通訳者として、これまで数々の経験を積んできました。
とりわけ印象深い経験の一つに、2005年のノーベル平和賞受賞者だったケニアの環境副大臣(当時)、ワンガリ・マータイさんの通訳をさせていただいたことがあります。初めて日本を訪れたマータイさんに、招聘元である毎日新聞社のインタビューの中で、「もったいない」という言葉を紹介されました。私はその時、咄嗟に「もったいない」を「ムダである(wasteful)」と訳してしまいました。英語に同じ概念を表す言葉がないので、日本語の「もったいない」に託された思いは全く伝わりませんでした。言葉を置き換えようとしただけで日本の文化的背景の中での意味を伝えられなかった、と感じた私は日本人がどういうときに「もったいない」と感じるのか例を挙げて詳しく説明しました。「例えば子どもが残したり、まだ使えるものをゴミ箱に入れようとしたら、お母さんは『もったいない!』と叫ぶのですよ」と伝えたところ、マータイさんは「素晴らしい言葉だ」と感激され、その夜のパーティー、そして翌日に行われた小泉首相(当時)との会談でも、「MOTTAINAI」という言葉を使われたのです。その後の「MOTTAINAI」の広がりはご承知のとおりですが、一人のコミュニケーション・スペシャリストとして、本当の「意味」を伝えることの重要性を再認識し、異文化の交流に貢献する機会をいただけて、幸せでした。
私たちコミュニケーターズは、スペシャリスト集団として、これからもスキルと感性を磨き続け、異文化間コミュニケーションの場で、お客さまのメッセージをしっかりと受け止め、伝えていきたいと考えています。皆さまの良きパートナーとして、お役に立つことができれば心よりうれしく思います。